「城」カフカ
カフカは面白いなあ。
助手たちは、相変わらず身をKに押し付けてくるので、肘で突き飛ばさなくてはならなかった。
おまけに、助手の一人が、首に襟巻をしているのだが、その端が風にひるがえって、二、三度Kの顔をたたきつけるのだった。すると、もう一人の助手が、長い、とがった、たえず動いている指で襟巻をすぐさまKの顔から払いのけてはくれるのだが、事態は、そのために少しも好転するわけではなかった。それどころか、ふたりは、あちこち道草をすることがおもしろくなりだしたらしかった。風と夜の落着かない荒天とのために、かえって浮かれだしたのである。
ふたりは、身をかがめるようにしてバルナバスの後ろに隠れた。しかし、それほどおびえているわけではなかった。でなければ、手にしたカンテラをバルナバスの左右の肩にのせるようなことはしなかったであろう。むろん、バルナバスは、それをすぐにふり落とした。
何がおかしいって、別にこの助手がこんな変なやつである必要がどこにもないってことで、わざわざこんな変なことを挿入するカフカは本当に何を考えていたのだろうか。他にも、6ページにわたって主人公のことを救ってやろうという意図で長々と話しかけている人がいるのだが、ようやく話し終えた次の行で、
Kは、ぐっすり眠っていた。
と書かれていたりする。ここで「寝てんのかよ!」と突っ込まない読者がいるだろうか。とにかく、何でこんなことを書くのだろうこの人はと思わずにはいられない部分がかなりあって、それは不条理な小説だから当然といえば当然かもしれないけれど、やはりカフカは俺を笑かそうとしていたように思えてならない。